卒業証書だけで大学に来ますか? 卒業証書が無くても大学に来ますか?
- 大学で勉強するのはなぜだと思いますか。できるだけたくさん理由を挙げてください。
-
その後、下の表の少し専門的な言葉を確認してから、本文を読んでください。
- 本文を一度読んだら、音声を聞きながらもう一度読んでください。
-
次のページを見ると、本文中に出てくる学術的な言葉を見ることができます。
言葉 | 読み方 | 品詞 | 例 |
---|---|---|---|
削減 | さくげん | サ変名詞 | 電力使用量を削減するために、家庭内の照明をLEDに変えた。 |
申請 | しんせい | サ変名詞 | ビザを申請するためには、必要な書類を揃えて大使館に提出する必要があります。 |
京都大学で最適化1を教えている教育者として、最少の労力で最大の教育効果をあげることは興味ある研究課題である。講義では宿題を課しているが、丁寧に採点しようとすればかなり時間を取ってしまう。採点の際に記したコメントを読んで講義の内容に興味を持ってくれれば効果はあったといえるが、採点した宿題を取りに来ない学生もいる。そんな場合は、費用対効果は最悪である。効果の方が余り変わらないのであれば、かける労力の方を削減すればよい。どんどん( A )、「配布したプリントを読んでおきなさい」といって講義を終われば、学生も喜ぶ(かな?)。休講を多くすれば学生はもっと喜ぶし、私も楽である。いっそ、試験だけにしてしまおうか。いや、元々京都大学に入学した学生は優秀なのだから、試験なんかしなくても申請があれば単位を与えれば良い。いっそのこと、卒業に必要な単位数などにこだわらず、4年経ったら卒業証書を渡せばよいのではないか、とだんだん過激になる。これを続ければ、「京都大卒」の( B )はなくなり、卒業証書をもらっても意味がないことにそのうち気づくだろう。
では、・・・卒業なんて制度をやめてしまったらどうだろう。学生は、自分の現在の知識レベルを判断し、将来のキャリアを考えて必要と考える講義を聴き、社会に出るのに十分な実力がついたと自己判断ができたら、勝手に大学を去ってゆくという制度である。単位を取ることが無意味になるので、講義に出席すること自体の意味はなくなるだろう。これは、教員側にとっても恐ろしい制度である。学生に意味が無いと判断されたら、受講者がいなくなる。同じ講義でも、(単位が取りやすいかどうかでなくて)学生が実力がつくと感じる講義をしている教員に学生は集まるだろう。予備校2では既にこのような制度ができているのは、予備校生は予備校で単位をもらっても意味が無いことを理解しているからである。大学は違うのか。
少し前、教育に関する全国的なシンポジウム3の中で講演された、長年採用を担当された企業の方が、「近いうちに、採用する際どの大学かではなく、どの大学でどの教員の講義をどのような成績でパスしてきたか、を採用の①指標にするようになるだろう」と言っておられた。社会では上記のようなことが起こりつつある気がする。
大学生の皆さん、自分の大学でどれだけスキルアップしましたか。具体的に自分で書き出してみて下さい。また、この1ヶ月で(漫画以外で)何冊本を読みましたか。英語の能力は入学時より落ちていませんか。
1最適化:あらかじめ定められた評価を、もっとも良くする解を求めること。
2予備校:大学入試に特化した指導を行う教育機関。高校生が放課後に通ったり、高校3年生の時に志望する大学の入学試験に合格できず、高校卒業後翌年の入学試験に向けて日中に通ったりする機関を指すことが多い。
3シンポジウム:特定のテーマや問題について専門家が集まり、意見交換や討論を行う会議や集会
- 下は、読解本文に現れる学術共通語彙(松下 2011)に色付けをしたものです。レベルごとに色が違います。
- 学術共通語彙は、学術的な文章を読むときに知っておくべき語です。知らない言葉があったらぜひ覚えて下さい。
京都大学で最適化を教えている教育者として、最少の労力で最大の教育効果をあげることは興味ある研究課題である。講義では宿題を課しているが、丁寧に採点しようとすればかなり時間を取ってしまう。採点の際に記したコメントを読んで講義の内容に興味を持ってくれれば効果はあったといえるが、採点した宿題を取りに来ない学生もいる。そんな場合は、費用対効果は最悪である。効果の方が余り変わらないのであれば、かける労力の方を削減すればよい。どんどん手抜きをして、「配布したプリントを読んでおきなさい」といって講義を終われば、学生も喜ぶ(かな?)。休講を多くすれば学生はもっと喜ぶし、私も楽である。いっそ、試験だけにしてしまおうか。いや、元々京都大学に入学した学生は優秀なのだから、試験なんかしなくても申請があれば単位を与えれば良い。いっそのこと、卒業に必要な単位数などにこだわらず、4年経ったら卒業証書を渡せばよいのではないか、とだんだん過激になる。これを続ければ、「京都大卒」のブランドはなくなり、卒業証書をもらっても意味がないことにそのうち気づくだろう。
では、卒業なんて制度をやめてしまったらどうだろう。学生は、自分の現在の知識レベルを判断し、将来のキャリアを考えて必要と考える講義を聴き、社会に出るのに十分な実力がついたと自己判断ができたら、勝手に大学を去ってゆくという制度である。単位を取ることが無意味になるので、講義に出席すること自体の意味はなくなるだろう。これは、教員側にとっても恐ろしい制度である。学生に意味が無いと判断されたら、受講者がいなくなる。同じ講義でも、(単位が取りやすいかどうかでなくて)学生が実力がつくと感じる講義をしている教員に学生は集まるだろう。予備校では既にこのような制度ができているのは、予備校生は予備校で単位をもらっても意味が無いことを理解しているからである。大学は違うのか。
少し前、教育に関する全国的なシンポジウムの中で講演された、長年採用を担当された企業の方が、「近いうちに、採用する際どの大学かではなく、どの大学でどの教員の講義をどのような成績でパスしてきたか、を採用の指標にするようになるだろう」と言っておられた。社会では上記のようなことが起こりつつある気がする。
大学生の皆さん、自分の大学でどれだけスキルアップしましたか。具体的に自分で書き出してみて下さい。また、この1ヶ月で(漫画以外で)何冊本を読みましたか。英語の能力は入学時より落ちていませんか。
色 | レベル |
---|---|
green | 初級 レベル0 |
royal blue | 中級 レベルI |
dark blue | 中級 レベルII |
goldenrod | 上級前半 レベルIII |
orange | 上級前半 レベルIV |
sienna | 上級後半 レベルV |
pink | 上級後半 レベルⅥ |
crimson | 超上級 レベルⅦ |
red | 超上級 レベルⅧ |