世界は磁場を出すモノにあふれてる

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  1. 次のものを、磁石にくっつくものとくっつかないものに分けてください。
    鉄のクギ ペットボトルのフタ 輪ゴム アルミ缶 スチール缶
  2. その後、下の表の言葉を確認してから、本文を読んでください。
  3. 本文を一度読んだら、音声を聞きながらもう一度読んでください。
  4. 次のページを見ると、本文中に出てくる学術的な言葉を見ることができます。

 

言葉 読み方 品詞
電磁気 でんじき 名詞 彼は大学で電磁気学を専攻し、電磁波の理論について深い知識を持っています。
惑星 わくせい 名詞 地球は太陽系の惑星の一つで、生命が存在する唯一の場所として知られています。
磁場 じば 名詞 研究者たちは、太陽からの磁場の変化が地球の気候にどんな影響を与えるかを調査している。
地表 ちひょう 名詞 地表の温度は季節によって大きく変動することがあります。
近傍 きんぼう 名詞 この地区の近傍には商業施設が集まっており、週末になると多くの人でにぎわいます。
アクリル - 名詞 アクリル素材は透明で軽量なため、様々な製品に使用されています。
樹脂 じゅし 名詞 樹脂は工業製品や家庭用品に広く使われており、その用途は多岐にわたります。
セラミック - 名詞 セラミックは耐熱性と耐久性が高いため、食器やタイルとして利用されています。
ステンレス - 名詞 ステンレス鋼はさびにくい特性があり、キッチン用品や外装材に使用されることが多い。
器具 きぐ 名詞 彼は料理が得意で、様々な高級な調理器具を持っている。

 

 

 

世界は磁場を出すモノにあふれてる
 
キーワード:磁場計測、磁気センサ、非磁性体、つまようじ


 私は地球や惑星わくせい電磁気でんじき現象を専門とし、地球や惑星周辺で計測した磁場データを解析して研究している。必要な精度は、地表の磁場測定・データの解析と同じく、地表より上空の地球の周りでも、惑星の周りでも、おおよそ「地表の地磁気の10万分の1」。性能の良い計測機器が必要なのは当然であるが、いくら機器の性能が素晴らしくても、元の測りたい磁場が「汚染おせん」されてしまっては意味がない。磁力計の近くには、間違っても人工的な磁場を出すものを置いてはいけない。例えば、電気回路実験で良く使うミノムシクリップは、絶対に磁気センサの近くで使ってはいけない。
 ( A )、磁場の計測やその準備の試験の際には、機器の支持具や近傍きんぼうで使うものを徹底てっていして非磁性材でそろえる必要がある。少しでも油断すると、磁場を出すものは容易に機器の近くに入り込み、折角のデータをだめにする。きちんと実験する時にはアクリルや樹脂じゅし、セラミックを使うのだが、ちょっと試すときには磁石を持ってDIYショップへ行き、これと思うものを磁石につかないことを確認して買ってくる。この結果、実験室には木の板、レンガ、発泡はっぽうスチロール、塩ビ管など、一見すると理学の研究と関係が無さそうなものの山が出来る。
 センサを組み立てる道具にも気をつかう。一般的なねじはセラミックドライバで回すが、非磁性材製が市販されていない種類の器具の場合には、アルミやチタンで専用器具を作ることもある。センサの水平を取るための精密せいみつ水準器は、業者に特注してアルミの削り出しで作ってもらった(通常はステンレス)。センサの微調整びちょうせいをする時に重宝するのは、「つまようじ」。磁場を出さず、適度に柔らかくてセンサをきずつける心配もない。こんなものを磁気センサの調整に使うのは私だけかと思っていたら、同業のドイツ人に「日本のつまようじはみぞがあってすべらなくて使いやすいね」と言われ、つまようじの持つ国際性におどろいた。

 

(執筆者:松岡 彩子)

 


出典:『弘報』京都大学理学研究科・理学部,2018,218号
  • 下は、読解本文に現れる学術共通語彙ごい(松下 2011)に色付けをしたものです。レベルごとに色が違います。
  • 学術共通語彙ごいは、学術的な文章を読むときに知っておくべき語です。知らない言葉があったらぜひ覚えて下さい。

 私は地球や惑星の電磁気現象専門とし、地球や惑星周辺計測した磁場データ解析して研究している。必要精度は、地表の磁場測定データ解析と同じく、地表より上空の地球の周りでも、惑星の周りでも、おおよそ「地表の地磁気の10万分の1」。性能の良い計測機器必要なのは当然であるが、いくら機器の性能が素晴らしくても、元の測りたい磁場が「汚染」されてしまっては意味がない。磁力の近くには、間違っても人工な磁場を出すものを置いてはいけない。例えば、電気回路実験で良く使うミノムシクリップは、絶対に磁気センサの近くで使ってはいけない。
 このため、磁場の計測やその準備試験には、機器支持具や近傍で使うものを徹底して磁性で揃える必要がある。少しでも油断すると、磁場を出すものは容易機器の近くに入り込み、折角のデータをだめにする。きちんと実験する時にはアクリルや樹脂、セラミックを使うのだが、ちょっと試すときには磁石を持ってDIYショップへ行き、これと思うものを磁石につかないことを確認して買ってくる。この結果実験室には木の板、レンガ、発泡スチロール、塩ビ管など、一見すると理学研究関係が無さそうなものの山が出来る。
 センサを組み立てる道具にも気を遣う。一般なねじはセラミックドライバで回すが、磁性製が市販されていない種類の器具の場合には、アルミやチタンで専用器具を作ることもある。センサの水平を取るための精密水準器は、業者に特注してアルミの削り出しで作ってもらった(通常はステンレス)。センサの調整をする時に重宝するのは、「つまようじ」。磁場を出さず、適度に柔らかくてセンサを傷つける心配もない。こんなものを磁気センサの調整に使うのは私だけかと思っていたら、同業のドイツ人に「日本のつまようじは溝があって滑らなくて使いやすいね」と言われ、つまようじの持つ国際に驚いた。


レベル
green 初級 レベル0
royal blue 中級 レベルI
dark blue 中級 レベルII
goldenrod 上級前半 レベルIII
orange 上級前半 レベルIV
sienna 上級後半 レベルV
pink 上級後半 レベルⅥ
crimson 超上級 レベルⅦ
red 超上級 レベルⅧ

世界は磁場を出すモノにあふれてる

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