建築+土木+ランドスケープ

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  1. あなたが一番好きな建造物や公園、道といったパブリックスペースはどこですか。好きな理由も言ってください。
  2. その後、下の表の少し専門的な言葉を確認してから、本文を読んでください。

  3. 本文を一度読んだら、音声を聞きながらもう一度読んでください。

 

言葉 読み方 品詞
敷地 しきち 名詞 敷地内には、小さな庭があり、季節ごとにさまざまな花が咲きます。
隣地 りんち 名詞 隣地には大きな公園があり、子供たちが遊ぶ声が聞こえてきます。
橋梁 きょうりょう 名詞 この地域は多くの川が流れており、多数の橋梁が架けられています。
駅舎 えきしゃ 名詞 新しい駅舎はモダンなデザインで、多くの人々に注目されています。
景観 けいかん 名詞 このホテルは山の景観が素晴らしく、多くの観光客が訪れます。
護岸 ごがん 名詞 護岸を強化することで、洪水時の安全が向上します。
堤防 ていぼう 名詞 堤防が築かれて以来、この地域の洪水被害が大幅に減少しました。
盛土 もりつち 名詞 盛土の上に新しいビルの基礎が築かれる予定です。
高潮位 こうちょうい 名詞 台風接近時には、この地域では高潮位が予測されます。
侵入 しんにゅう サ変名詞 パソコンにウイルスが侵入し、大事なデータが失われた。
改修 かいしゅう サ変名詞 古い学校を改修して、地域の図書館として再利用する計画が立てられています。
張力 ちょうりょく 名詞 張力を調整することで、テントの布がぴったりと張れます。
舗装 ほそう サ変名詞 この道路は来週舗装されます。きっと運転しやすくなるでしょう。
補修 ほしゅう サ変名詞 古い家具ですが、補修しながら、大切に何年も使っています。
模様 もよう 名詞 壁の模様が人の顔のように見えて、少し怖いです。
街路 がいろ 名詞 街路の整備が進むと、歩行者や自転車の安全性が高まります。
設計 せっけい サ変名詞 彼は自宅の庭を自ら設計し、独自の空間を創出した。

 

 

 

建築+土木+ランドスケープ
 
キーワード:建築、デザイン、設計


 朝,自宅を出て駅に向かうまでの道のりだけでも,お隣さんとの敷地を隔てる隣地境界,道路との境界を示す道路境界,公園や橋梁きょうりょう駅舎えきしゃなどが目に入る。敷地にまつわるものだけでも,私たちのまわりには無数の見えない境界や異なる管理区分が存在している。
 学生時代に建築設計を学びながら「敷地内の建物の設計だけでなく,その外にも広がっている経験も含めたひとつづきの経験をデザインしたい1」と都市系の土木インフラ2や景観分野のデザインに関する知見を広げた。2011年に大学を修了して以来現在に至るまで,建築やインテリアのデザインにおける実践から,護岸や公園,道路,パブリックスペース等の土木デザインの実践までを横断的な思考で設計を行っている。

小さなドボク
 たとえば,筆者が設計に携わり2017年に竣工しゅんこうした3《トコトコダンダン2017》は大阪の市街地を流れる木津川沿いの堤防のデザインである。水害からまちや人の暮らしを守ることが至上命題4である堤防に対してデザインという言葉は不釣り合いのように聞こえるかもしれないが,ここでは,「防災施設としての堤防」と「人の居場所としての水辺」が両立するランドスケープデザインとして,垂直型のカミソリ堤防5(垂直護岸)の断面に階段状の構造物やスロープ状の盛土のデザインを描き加えることで,水とまちを面的につなぐやわらかな境界をつくった。
 こうした操作を加えることによって,人々が都市インフラに触れ,腰をかけたり,そこにある緑を育てることで環境をかえたり,高潮位の日には敷地内に水が浸入することで今まで認識ができなかった川の水位が可視化されることになるなど,大きなドボクが小さく感じられるような体験づくりを目指した。

ドボクのインテリア
 土木技術をインテリアデザインへ応用したこともある。RC造6のマンションの一室をシェアアトリエ7に改修するプロジェクト《ドボクノヘヤ2013》では,り橋などに使われるストランドロープ8の材料特性を生かして家具の構造として用いた。RC躯体くたい9にケミカルアンカー10を打ちロープに張力をかけて天板を支えるため,脚のない家具となるのだが,この小さな一室での実践は(最大ロープ長さが7.5m程度ではあった)脚のない巨大な家具や床たちが空中に浮かぶような不思議な風景も,このシステムを使えば比較的自由度高くつくることも可能にしたと考えている。
 そのほか,アスファルト舗装の道路の表面が,補修工事の繰り返しによって色の違う( A )状になっている現状に着目して,事前にこうした変化を取り込めるような分割デザインを施しておくことで,時間の経過とともにアスファルトの色違いが模様としてポジティブに変化していくことを考えた街路のデザインや,路面電車の終着駅のデザインとして,利用者数が少なく,電車の運行本数の少ない一部線路を廃線し,庭のような空間を挿入することで,プラットホームで電車を待つことが楽しくなるような空間の創造や,街に対して緑豊かで開かれた駅舎の計画とする提案など,領域にとらわれない設計活動を行っている。

(執筆者:岩瀨 諒子)


fig1;立体展開された堤防(c)studioIWASE

fig1;立体展開された堤防(c)studioIWASE

fig2;トコトコダンダン(c)Shingo Kanagawa.jpg

fig2;トコトコダンダン(c)Shingo Kanagawa

fig3;高潮位時に浸水する護岸(c)studioIWASE_c.jpg

fig3;高潮位時に浸水する護岸(c)studioIWASE

Fig4-1;ストランドロープの家具(2点)(c)mayaatsushi_c.jpg

Fig4-1;ストランドロープの家具(2点)(c)mayaatsushi

Fig4-2;ストランドロープの家具(2点)(c)mayaatsushi_B_c.jpg

Fig4-2;ストランドロープの家具(2点)(c)mayaatsushi

Fig5;街路イメージ(c)studio IWASE+fujirooll_c.jpg

Fig5;街路イメージ(c)studio IWASE+fujirooll

Fig6;将来的にパッチワークが模様になっていくイメージダイアグラム_c.jpg

Fig6;将来的に( A )が模様になっていくイメージダイアグラム

Fig7;片側線路が庭園となったプラットホーム_c.JPG

Fig7;片側線路が庭園となったプラットホーム


1ひとつづきの経験をデザインしたい:建物だけでなく、その外の空間や建物に至る道など、都市によってもたらされる人々の一連の経験をデザインしたい。
2インフラ:インフラストラクチャー(infrastructure)の略。
3竣工しゅんこうした:工事が終わった、完成した。
4至上命題:一番重要な役割。
5カミソリ堤防:薄くて垂直なコンクリートの堤防。
6RC造:Reinforced Concreteの省略形で、コンクリート柱などに中に補強のため鉄筋を入れること(入れたもの)で、鉄筋コンクリートともいう。
7アトリエ:画家、美術家といった芸術家が仕事を行う場所。
8ストランドロープ:素線(ストランド)をより合わせたロープ。
9躯体:建物の構造をかたちづくる部材の集まり。
10ケミカルアンカー:コンクリートとの固定に化学反応を使うボルトなどの止め金具。

 

出典:京都大学大学院工学研究科・工学部(2022)『工学広報』76号, pp.14-15
  • 下は、読解本文に現れる学術共通語彙ごい(松下 2011)に色付けをしたものです。レベルごとに色が違います。
  • 学術共通語彙ごいは、学術的な文章を読むときに知っておくべき語です。知らない言葉があったらぜひ覚えて下さい。

 朝,自宅を出て駅に向かうまでの道のりだけでも,お隣さんとの敷地を隔てる隣地境界,道路との境界示す道路境界,公園や橋梁,駅舎などが目に入る。敷地にまつわるものだけでも,私たちのまわりには無数の見えない境界異なる管理区分存在している。
 学生時代に建築設計を学びながら「敷地内の建物の設計だけでなく,その外にも広がっている経験含めたひとつづきの経験をデザインしたい」と都市土木インフラや景観分野のデザインに関する知見を広げた。2011年に大学を修了して以来現在至るまで,建築やインテリアのデザインにおける実践から,護岸や公園,道路,パブリックスペース等の土木デザインの実践までを横断思考で設計を行っている。

小さなドボク
 たとえば,筆者が設計に携わり2017年に竣工した《トコトコダンダン2017》は大阪の市街地を流れる木津川沿いの堤防のデザインである。水害からまちや人の暮らしを守ることが至上命題である堤防に対してデザインという言葉は釣り合いのように聞こえるかもしれないが,ここでは,「防災施設としての堤防」と「人の居場所としての水辺」が両立するランドスケープデザインとして,垂直のカミソリ堤防(垂直護岸)の断面に階段状の構造物やスロープ状の盛土のデザインを描き加えることで,水とまちをにつなぐやわらかな境界をつくった。
 こうした操作加えることによって,人々が都市インフラに触れ,腰をかけたり,そこにある緑を育てることで環境をかえたり,高潮位の日には敷地内に水が浸入することで今まで認識ができなかった川の水位が可視化されることになるなど,大きなドボクが小さく感じられるような体験づくりを目指した。

ドボクのインテリア
 土木技術をインテリアデザインへ応用したこともある。RC造のマンションの一室をシェアアトリエに改修するプロジェクト《ドボクノヘヤ2013》では,吊り橋などに使われるストランドロープの材料特性を生かして家具の構造として用いた。RC躯体にケミカルアンカーを打ちロープに張力をかけて天板を支えるため,脚のない家具となるのだが,この小さな一室での実践は(最大ロープ長さが7.5m程度ではあった)脚のない巨大な家具や床たちが空中に浮かぶような不思議な風景も,このシステムを使えば比較的自由度高くつくることも可能にしたと考えている。
 そのほか,アスファルト舗装の道路の表面が,補修工事の繰り返しによって色の違う状になっている現状着目して,事前にこうした変化を取り込めるような分割デザインを施しおくことで,時間の経過とともにアスファルトの色違いが模様としてポジティブに変化していくことを考えた街路のデザインや,路面電車の終着駅のデザインとして,利用が少なく,電車の運行本数の少ない一部線路を線し,庭のような空間挿入することで,プラットホームで電車を待つことが楽しくなるような空間創造や,街に対して緑豊かで開かれた駅舎の計画とする提案など,領域にとらわれない設計活動行っている。


レベル
green 初級 レベル0
royal blue 中級 レベルI
dark blue 中級 レベルII
goldenrod 上級前半 レベルIII
orange 上級前半 レベルIV
sienna 上級後半 レベルV
pink 上級後半 レベルⅥ
crimson 超上級 レベルⅦ
red 超上級 レベルⅧ

建築+土木+ランドスケープ

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